後藤芳博 Yoshihiro Goto

命理学について

Four Pillars of Destiny

八字命理学は、命理の真髄・真義を探究し続ける学問学術です。

『八字命理学新解(全四巻)』について

命理学の歴程

中国北宋時代の先哲徐子平が祖と云われる命理学(命学、四柱推命学、八字命理学、子平命理学などとも言う)は、陰陽五行哲学の基礎の上に構築された、人の命運・命数に関わる学問学術です。その創始から現代まで九百年余りの長きにわたり、幾多の先哲先達先人が命理学の真義・深奥を探究し続けたのです。

その発展向上の歴程は、『神峰通考 命理正宗』(張南峰著)、『三命通會』(萬民英著)、『命理約言』(相国陳素庵著)、『子平真詮』(沈考瞻著)、『造化元鑰』(徐樂吾評註)、『命理新論(上中下冊)』(呉俊民著)、『四柱推命学詳義(全十巻)』(武田考玄著)、『子平命學導航(上中下巻)』(許羽賢編著)、『滴天髓闡微現代評註(全四巻)』(了無居士評註)等の多数の優れた命書から知ることができます。かたや、その長い探究の過程では、試行錯誤の模索があり、或いは真義から逸脱した似非物・異説が唱えられ、命論に大きな混乱混迷ももたらした。

現代日本の命理家の中には、この中国の多数の命理原典・原書を長年に亘って探究考究し、その理法を深く読み解かれると共に理論的に矛盾なく首尾一貫した学術的理論体系を創造的に築き上げられた。巷間に流布する四柱推命とは根本的に異なる本物の推命論が公表公開されたのです。しかし、その画期的な進歩発展を遂げたかに見えた推命論も、真摯に研鑚するうちに、依然としてその理論体系にまだまだ理解困難な疑問や実証不能な課題を研究するに至りました。


命理の理法/用法の再構築

合理的実証的でなく理会困難な旧来の理法/用法について、『滴天髓闡微』(任鐡樵増註)、『造化元鑰』(徐樂吾評注)、『命學新義』(水繞花館主著)などの枢要な原書に基づきながら、次の如き抜本的かつ大胆な見直しを行いました。

  1. 命理は、陰陽五行十干の生剋扶抑が基本でありながら、古典命理に依拠した「天干の合去・合化・剋去」や「地支の方・局・合化・合去」の解法には、何ら有効有用な機能働きがなく、解命過程を徒に複雑とし、命理を混乱させるだけです。実証的に事実事象とも符合することはない無用無益な拘るべからざる空論です。
  2. 地支蔵干(人元用事の分野)は、その始まりが明らかでないことが原因して各命書とも同じではなく微妙に異なります。地支蔵干の配し方は、月支月令蔵干の構成要件である春夏秋冬四季の循環を根拠に抜本的に見直し、中気は配さず、「季初の気/余気・本気」の二気だけとし、また月に占める分野日数も改めています。
  3. 徐樂吾氏が説いている如く未月土用に土は旺じ、辰・戌・丑月の土用では「旺不旺」(旺とは言え旺じていない)です。従来から土の看方は大変難しいと云われて来ました。四季月の土旺と土用は峻別されるべきです。土の力量は、新しく開発した五行の旺衰細分数値化力量計算法によって、夫々の五行と共に旺衰強弱力量を誤まりなく明確に判別できます。
  4. 十干毎の一年十二ケ月における水火調候の要不要/適不適を見直してあります。また、辰月土用の戊土は木旺と火旺が交雑する気であり、かつ、蔵干癸水が配さないことから単独で湿土ではなく、湿の丑土のように調候の代役は果たせない。かたや、戌月土用の土は燥土ではなく、立冬に近付くにつれて寒湿の気を帯びて来るものです。従来から古典命理で云われてきた戌月燥土の調候壬水の 論は無用であります。
  5. 上記(2)の地支蔵干論とも密接に関連しますが、従来の複雑にして奇怪な命格の選定法を全面的に改めました。普通格は「財官印綬分偏正。兼論食傷八格定。」(『滴天髓』)と云われる八格に「陽刃・建禄格、比肩・月劫格」の四格を加えた十二格、特別格は、「従旺格」、「棄命従格」(従児格・従財格・従殺格・従勢格)の五格とします。命の体性は必ずこの十七格の何れかに該当します。なお、命格がない無格の命はあり得ないことです。
    従来の特別格の中には、化格(化気格)、一行得気格、両神成象格、仮の特別格などの無用な格があります。特に化気格(化木格、化火格、化土格、化金格、化水格)に至っては故事付けをしない限り、事実事象と符合することはない妄想の論です。
    (命格・丑土用の実命例:「嵐」メンバー・櫻井翔さん(丑土用従児格)の解命について[PDF])
  6. 現代の命理学は、地球の経線=経度は細かに考慮しているのに反し、緯線=緯度の差異をどの様に取り込むか大きな課題を遺しています。命理学が春夏秋冬の四季がある約北緯三十五度の黄河中流域に興ったことを考えれば、また、緯度により桜が開花する時期が異なる桜前線のことなどを考慮すれば、命理学にとって大切な研究課題であることが判かります。
    私は当時の国際協力事業団からタイ国バンコクに三年間派遣されたチャンスを生かし、春夏秋冬四季のない熱帯域(低緯度域)のタイ国に生まれ育った人に命理学が適用できるか否か検討・検証致しました。結果は本書巻二に南北回帰線間熱帯域命理の試論として取りまとめています。(参考資料:南北回帰線間熱帯域の命理試論[PDF])



以上に記載する新解法の開発・導入は、陰陽五行十干の特性特質から始め、生剋扶抑・旺衰強弱の看方、普通格特別格の選定法、真神仮神の選用、用喜忌神の取用法、性情・病源・適職・貴賎寿夭論・六親論などの多種多様にわたる事象論の旧来の看命法に極めて大きな影響を与えます。このため、『八字命理学新解』(全四巻)では、『滴天髓闡微』『造化元鑰』『命學真義』などの命理要書に照らしつつ、新解命法が命理基礎理論から事象論に至るまで矛盾なく首尾一貫して適正的確な論法であることを検証・確認しています。