後藤芳博 Yoshihiro Goto

現代命理学・奇門遁甲

Qimen Dunjia

命理・遁甲による造命開運法

命理学は、従来、時空中に生存する人間に関わる「時間」を主軸にした事象を扱い、空間方位的な事象には殆んど触れなかったのです。かたや奇門遁甲は、時間の流れの中で空間方位的な事象を主題にして考究されて来ました。東洋の運命学は、必然的天地自然の運行(=太陽と地球の運行)を形而化した「陰陽五行」を基礎背景にして事象を判断をするという共通的要素を持っています。「陰陽五行哲学」を理論的背景にしながら、現代の命理学及び奇門遁甲は表裏一体=時間と空間との統一体として捉えるのです。時空中に生存する人の積極的効果的な造命開運法として一体的に運用されるのです。

陰陽五行と時間空間

この「陰陽五行」について、中国の近代の命理家・徐樂吾氏は、命理の要書『造化元鑰』(徐樂吾氏評註)の「五行総論」の項に「時間と空間」=「四季五行の循環と空間方位」は一体的であって切り離せないことを次の如く説いています。

五行とは、春夏秋冬の気候のことです。天地の間に遍く行きわたり、循環して絶えることがない故に行と謂うのです。

  • 北方は陰の極で寒を生じ、寒は水を生じる、
  • 南方は陽の極で熱を生じ、熱は火を生じる、
  • 東方は陽を散泄(さんせつ)して風を生じ、風は木を生じる、
  • 西方は陰にして收まり止まって燥を生じ、燥は金を生じる。
  • 中央は陰陽が交わって温を生じ、温は土を生じる。

五行は四季春夏秋冬の気候を表し方位に配するは天然自然から出たものです。

  • 北方は亥子丑で冬季、
  • 南方は巳午未で夏季、
  • 東方は寅卯辰で春季、また、
  • 西方は申酉戌で秋季に当たります。
  • 土には専位がなく、中央に居て、四隅に寄せます。四隅とは、艮(丑寅)、巽(辰巳)、坤(未申)、乾(戌亥)のことで四季が交脱する時期です。
四季五行・十二支・空間方位
冬季・北春季・東夏季・南秋季・西冬季
寒・水水土風・木木土熱・火火土燥・金金土寒・水
北東南東南西西北西
30°60°30°60°30°60°30°60°

現代の命理・奇門遁甲は、上述の如く、「陰陽五行」を背景とする「時間」(四季春夏秋冬の循環)と「空間方位」という分離不可能な天地自然の必然的相関関係の中で考察されるのです。

奇門遁甲の起源・沿革

奇門遁甲は、古代中国の国家間の戦闘において、戦機を捉え、自国の軍を勝利に導く「秘中の秘」の方位術・占術として創始された。その創始伝説によれば、古代中国を統治した最初の帝とされる黄帝(こうてい)が蚩尤(しゆう)という王の討伐に向かうが、黄帝の軍は蚩尤の軍に苦戦を強いられる。その苦戦中にあって黄帝が祭壇をつくり祈念すると、夢に九天玄女が現れ竜甲神章十八籍を授かったのです。黄帝は入り江で風后(ふうご)という人物を得て、風后に命じ符訣を研究させ初めて「奇門遁甲」を作成することができたのです。この奇門遁甲により黄帝は遂に蚩尤を討伐・平定したのであります。

紀元前221年に秦が天下を統一し紀元前206年に秦が滅亡した後、張子房(紀元前200年頃の人で張良ともいう)は、黄石公(周の太公望)という老人より「奇門遁甲」の真伝を得たとされ、前漢初代皇帝となった劉邦が挙兵するに当たり、奇門遁甲をもって輔佐し戦功を上げて漢建国の功を果たした。

次いで三国時代を迎え登場したのは諸葛孔明(諸葛武侯)(西暦181~234年)です。諸葛孔明は、天文・地理に精通し、蜀の劉備には三顧の礼をもって迎えられ、奇門遁甲によって百戦百勝し天下三分の計(後漢末期に孔明が劉備に説いた戦略)を輔佐したと伝えられています。当時諸葛孔明がどの様な奇門遁甲を使ったのか判然としていませんが、『三国演義』に描かれている有名な赤壁の戦い(=後漢末の建安13年・西暦208年、孫権・劉備の連合軍と曹操軍とが揚子江の赤壁で戦った)では、孔明が奇門遁甲の壇を設けて祈り季節外れの風を吹かせて、火攻めに成功し、敵の曹操の水軍を全滅させたと伝えられています。

さらに劉伯温(劉基)(1311年生~1375年没)は、元代末、最も難関な官吏登用のための科挙の試験(殿試)に合格した進士で、朱元璋に仕え、明朝の建国に際して大きな功績があったのです。魔術師的軍師としても崇拝され、三国時代の諸葛孔明と並び称された。その劉伯温は、大明洪武四年(西暦1371年)、『奇門遁甲秘笈全書』なる書を編輯・出刊しています。また命理学の分野では、命理の聖典と言われる『滴天髓』に優れた原註を施し、命理学にも通暁した人であった。

『奇門遁甲秘笈全書』は、当時の巷間に流伝流布していた奇門遁甲関連の書や歌訣を編輯したもので、巻一から巻三十でもって構成される。冒頭の巻一には遁甲の聖典とも言われる「煙波釣叟歌」、「奇門總要訣」などを掲げ、次いで、

現代の奇門遁甲

恩師の故武田先生は、この『奇門遁甲秘笈全書』(劉伯温編輯)をはじめ多数の遁甲書・歌訣を克明に探究され、「命理と遁甲は表裏一体、時間と空間の統一体として認識・把握しなくてはならない」という理法を遁甲史上はじめて説かれた。
古代の奇門遁甲は、前述の通り、戦闘の機を捉え戦さに勝利するための秘中の秘=極秘の術として使われたものが、現代の奇門遁甲は、個人の命運の良化を図るため、或いは各人の希望・願望を達成するための造命開運法に変貌したのです。

「命運の良化のための遁甲は、流月の中で実践して行くものであり、空間・方位エネルギーを生命エネルギーである原命・大運に負荷することにより、エネルギーの価値転換を行って、原局・大運・流年の相関関係が悪いなら良い方向へ、良いならその良好性をさらに増幅・飛躍させて行くことができるのが最も積極的な造命開運法である。」(末尾の引用参考文献(2))。現代の奇門遁甲活用の目的や目標は、次の如く多種多様なものに亘っているのです。

  • 命運の良化のため(基本的活用法)
  • 店舗開店、会社創設
  • 才能能力の開発・発揮、学力向上
  • 治病、健康増進
  • 借財・求財
  • 結婚、縁結び
  • 地位向上、名誉獲得
  • 試験合格 等々

命理・遁甲による造命開運並びに瞑眩について

人の命運の良化は、改めて申すまでもなく、漫然として棚ぼた式に成就できるものではなく、自らの造命開運に向けての積極的取り組みが必要不可欠です。命運を良化できる所謂「天の時・地の利・人の和」は何時でもある訳ではなく、また、短期間の内に頻繁に繰返し使用すべきものでもありませんが、奇門遁甲が適正適切に活用されれば、大きな遁甲効果を得ることができます。かたや、使い方を誤れば、遁甲の実施者はその錯誤の程度に応じた心身の不調、人間関係の悪化、事故・怪我、財の損失・散財、物的損害、災難など命運の悪化に繋がるものです。
(造命開運の実例:命理・遁甲による幼小児の自己改革の実例[PDF]

また、人によっては遁甲の実施前、或いは実施直後から良い効果が出る場合もあれば、反対に遁甲活用前・活用中、或いは活用後に頭痛がしたり、熱が出たり、腹を壊したり、怪我をしたりなどの拒絶反応としての一過性の瞑眩(めんげん)が出ることがあります(下段に添付する「瞑眩実例 [PDF] 」を参照して下さい。この様な瞑眩反応は実際の遁甲活用を通じはじめてよく理解納得できるものです。)
(瞑眩実例:瞑眩により翌日の遁甲実施を急遽取り止め[PDF]

引用参考文献
(1)『奇門遁甲全書』(張子房・諸葛武亮先生著 宏業書局印行 台湾)
(2)『目的達成法としての奇門遁甲学入門』(武田考玄著 秀央社)
参考資料
» 奇門遁甲の陰遁・陽遁の根拠について[PDF]
» 奇門遁甲における「磁北」と「真北・真方位」について[PDF]